| あっち亭です。男は山崎太一か。 | - 2010/06/30
- 「相寄る心」の話はこうだ。
大正時代の北海道のある町。安呑み屋で、風体の上がらない中年の酔漢が大声を出している。自分の妻子を指差して「誰か女房を買ってくれないか。この女は自分で孕んで一人で子どもを生む女ですよ。旦那、どうですかい」。諌める女房の手を振り払って暴れる男。その場に牧師が出てきて、妻子を買うといい、男に金を手渡す。男は酒場を出て行った。15年の歳月が流れた。女と16歳くらいの少女が、あの呑み屋で聞き込みをしている。男の住んでいる町だけは判明した。母娘はその男、山崎太一の住む町に行き、一夜の宿をとった。宿の人に尋ねると山崎太一は15年前に他所から流れてきた、酒をたしなまない独身の人格者、こつこつと働き事業を成功させたうえに、なんと町長にまでなっていた。母は手紙を書いて娘に渡し、山崎家を訪れさせる。父と娘は再会を喜ぶが、妻であり母であるおさんは、ひとり肩をおとして駅路につく。無学で貧しい、おさんは出世した夫に娘を託し、二人の前から身を引こうと思ったのだ。父娘は、おさんを探すべく駅に向かって懸命に走り出した。「おさんー」「お母さーん」……。 富士琴路(ことじ)さんの代表作品。琴路師の再デビュー時の演題だ。この話は実話で、浪曲作家が脚色したと琴路師が語っていた。師ご自身の思い入れが深かった。その人にあてて書いたものは格別の味わいがある。フランク・シナトラの「マイ・ウエイ」。青山ミチ「叱らないで」。こまどり姉妹「ソーラン渡り鳥」。なんか、かなしいなあ。
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